インフルエンザに感染した従業員への対応
先日、報道ステーションというニュース番組をTVで観ていた所、最近インフルエンザが流行してきているとのことでした。
まだ夏のように暑い時期でも流行ってきているという注意喚起の報道です。
報道ステーションで取り上げられていた豊洲の子どもクリニックでは、一昨年、昨年の9月にはインフルエンザ患者数0人だったのに対し、今年は9月に入って121名の患者数だったそうで、厚労省データでは、8月28日から9月3日まで、1名を超えると流行期入りする換算で1医療機関2.56人だったとのことでした。
今後、涼しい時期や寒い時期に入ると、インフルエンザの患者さん数がもっと増えるかもしれません。
ということで、「インフルエンザ(やコロナ)に感染したら、従業員への対応はどうしたら良いのか」ということをご紹介いたします。
まず、インフルエンザで発熱が認められる場合や体調不良があった場合、匍匐前進しながら氷枕を頭に乗せて出勤してくるような猛烈熱血従業員を未だかつてお見かけしたことは無いですか、もしもその様な状況になっていらっしゃっても会社に来ようとする従業員がいたら、すぐに労働を禁止すべきです。
従業員としてまずふまえておかなければならないのが、従業員は使用者と労働契約を締結しています。
その契約上、労働者は使用者に対し、誠実に職務を遂行し、職務に専念する義務を負っています。
職務に専念できる体調でない場合、普段通りの業務をこなすことが果たして可能なのかどうかを踏まえ、まずは、契約上の義務を果たすべく体調管理に専念しなければなりません。
使用者は、すでにインフルエンザやコロナに感染している従業員が会社に出社すると、他の従業員の方々等に感染が広がる可能性が非常に高くなることを念頭におき、感染した従業員に対し、出社せず自主的に休む(病欠・有給休暇の消化)ように推奨します。
使用者からの命令ではなく、あくまでも従業員が自主的に休むことが大切なポイントです。
また、使用者の側から有給休暇の消化を無理やり指示することもできません。
この使用者の推奨によって欠勤しても、使用者としては賃金を支払う必要はございません。
それでも先程の匍匐前進のような休職しない従業員が現れた場合、使用者は出社禁止と自宅療養を指示することが可能です。
つまりは先程ご紹介した通り、使用者は体調が万全ではない従業員の労務提供を、拒むことができます。
また、使用者の安全配慮義務に従って、会社内の健康と安全の維持に務める必要があります。
この場合、もしもその従業員が医師の診断により療養や外出禁止の指示があった場合、出勤を禁止しても賃金支払義務はございません。
しかし、仮に感染症が疑われるような時期であったり、診察を受けていない段階で診断がくだされていない状況のなか、出勤禁止命令を下すと「業務命令」となり、会社都合による休業となることから、賃金支払義務が出てきます。
よって、感染が疑わしい場合は、あくまで自主的に休業を判断してもらうよう推奨することがポイントになります。
また昨今、インフルエンザを理由とする嫌がらせ、いわゆる“インフルエンザ・ハラスメント”の実態もあるようです。
「職場で “インフルエンザ・ハラスメント”を受けたことがある」数値は統計上まだ少ないようですが、内容としては「休ませてもらえなかった」「出社したら1日中嫌味」「仮病じゃないの?」「このままずっと休むか?」などの発言や、嫌がらせを受けたという調査結果が出ています。
インフルエンザの職場での拡散を防ぐためには、完全に治るまで休んでもらうことが何よりも効果的なのは言うまでもないですが、使用者や労務管理の担当者は、従業員の健康と職場環境を守るためにも、インフルエンザ・ハラスメントなどが起こらないように、従業員への理解を深めておく必要がありそうです。
今年はコロナとインフルエンザの流行がダブルパンチでやってきそうで、ますます感染症予防対策も重要になりそうですね。
私も罹患しないよう重々気をつけたいと思います。
松尾倫加