ブログ

ホームブログ時間外労働の割増賃金(残業手当)の計算方法について

時間外労働の割増賃金(残業手当)の計算方法について

先日、夕食時での夫との会話から。
「年俸制や月給制の場合、残業手当の計算方法ってどうなるのか?」っていう質問をされました。
私が簡単に答えた内容が、
「時間単価になおしてさ、法定で定められてる時間外の割増賃金率1.25以上で計算するで。」
という返答をしたところ、
「全くわからない」とクレームでした。
まずは、時間単価の計算方法って何?割増賃金率1.25って何?
とのことです。
とのことで、今回は時間外労働の計算についてご紹介したいと思います。

 

その前に、時間外とは何かご存知でしょうか。
労働時間は労働基準法において、厳しく規制されており、
原則として、週40時間(※)、1日8時間を超えて労働させることはできないと規定されています。
この原則の労働時間のことを、法律で規定している労働時間という意味で「法定労働時間」と呼びます。
また、会社により取り決めた労働時間のことを「所定労働時間」といいます。
所定労働時間は各会社様によって、ましてや変形労働時間制や裁量労働制を採用している場合違ってきます。
法定労働時間と所定労働時間は、区別して考えてください。
※ 商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業所は、1週間の法定労働時間が44時間と規定されています。

 

会社によっては規定で1日7時間30分の勤務だったりする事があります。
法定労働時間の1日8時間から会社の所定労働時間7時間30分を差し引いた30分間は
法律的に、その時間分の100%の支払いで良い「法内残業」と呼ばれる残業時間になります。
しかし、
この1日8時間週40時間の法定労働時間を超えた場合、時間外労働の割増賃金率分が、いわゆる「残業手当」として支給されます。
割増賃金率は125%以上、それが深夜22時から5時に及ぶとさらに25%以上加算されます。(休日の場合は今回割愛させていただきます)
これが割増賃金率と呼ばれるものです。(労働基準法37条4項、則20条) 

 

こちらは、賃金規定等でしっかり内容を整えておくことが非常に重要でして、
ましてや、制度や割増賃金率が定められていないとなると、
未払い賃金等発生し、後々大きなトラブルになります。

 

次に時間単価の計算方法です。
こちらは、
「月平均所定労働時間」を算出し、計算します。
「月平均所定労働時間」とは、1年間の合計の所定労働時間を、12(1年の月数)で割り、1か月あたりの平均の所定労働時間を算出したものです。
1年の中には、31日まである月もあれば、30日や28日までしかない月もあります。各月の残業代の計算方法にバラツキが生じないようにするため、「月平均」という考え方をします。
月平均所定労働時間は、以下の計算式によって算出します。
なお、以下の計算式の「(365日−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で算出した時間のことを、年間所定労働時間と呼びます。
この年間所定労働時間を12で割ったものが、月平均所定労働時間になります。
例えば、
「1日の所定労働時間が8時間、年間260日勤務(休日105日)」の会社の場合、
(365日−105日)×8時間=2,080時間・・・・・年間所定労働時間
2,080時間÷12か月=約173時間・・・・・月平均所定労働時間
となります。
つまり、この例のような会社では、残業代計算の際の月平均所定労働時間は、173時間となります。
そして、例えば
日給月給制30万円(基本給25万円資格手当5万円※)のAさんの場合
※こちらの計算に含められない手当も労働基準法にて定められております(労働基準法37条5項則21条)
30万円÷月平均所定労働時間173時間=1734.10→1734円・・・・・1時間あたりの単価
となります。

 

例えばこのAさんが1日9時間働いた日は割増賃金(残業手当)はどうなるでしょうか?
1時間あたりの単価1734円
法定労働時間8時間を超えた1時間の残業時間分として
1734円×1.25(125%)=2167.5→2168円(※端数処理)・・・・1時間の残業手当
(※1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる:昭和63年3月14日基発第150号)
となります。
ここまで来た所で、もう読んでる人もあまり残っていないかもしれません(笑)
ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。

 

給料計算は、これらの残業計算も含め、決して単純作業では無いと思います。
我々社労士は、一つ一つ、法律に則って、丁寧に計算していきます。
こういった丁寧な計算が、
のちのち、もしもトラブルが起こった際、多くの企業が苦しめられてしまう莫大な額になりかねない「未払い残業代」を防ぐことに繋がることになります。
給料計算は、例えて言うならば、
毎月の労働者さんの勤務状況を把握させて頂く、心電図のように感じるときがあります。
未然に病気になる前に、しっかりまずは毎月の賃金計算を行っておくことは、
体の調子を整えおくためのスクリーニングのように思います。

 

勤怠を見ていて、従業員さんの状況も伝わってくる事が多々あります。
皆様の勤怠を確認しながら、
「先月も元気にお仕事されたのだな」、と感じたり
「あれ?ふだん遅刻しない人なのに今月は珍しく遅刻どうしたのかな?」
とか、
「産休入るって報告あったし来月こんな手続きしとかなきゃ。」
っと応援している社労士が、影でこっそりあなたの給料計算をしているかもしれません。

 

給料計算は難しくもあり奥も深く、責任感も必要な大切なお仕事です。

 

松尾

 

※「月平均所定労働時間」で、一般的な例として記載しております。
実際には、各企業の就業規則や賃金規定に従って計算します。また、月の所定労働時間の場合や、フレックス、裁量労働時間制、変形労働時間制、日給制、年俸制等で変わります。
なお、就業規則や賃金規定は法律を遵守する必要があるため、法律で定められたことに反する規定(割増をしない、残業代を支払わないなどの規定)は無効です。

 

※会社の就業規則、実際の働き方等により記載の内容と異なる場合がありますのでご注意ください。

お問い合わせ

事前相談は無料です。労務関係に少しでも不安があれば、お早めにご相談ください。

受付時間:平日9:30~18:30

お問い合わせ後の流れ

01.お問い合わせご予約→02.ご相談お打ち合わせ※1→03.お見積りご提案※2→04.ご依頼契約→05.納品→06.事後フォロー01.お問い合わせご予約→02.ご相談お打ち合わせ※1→03.お見積りご提案※2→04.ご依頼契約→05.納品→06.事後フォロー

※1 ご相談・お打ち合わせは原則無料ですが、場合によりご相談料が発生する場合があります。

※2 費用については必ず事前に見積書を作成致します。