「30歳代から40歳代の女性の方のパートを募集」の張り紙から法違反について
先日、古都の観光の際に、とても雅な雰囲気のオシャレなお蕎麦屋さんにて昼食を頂きました。
そこでお手洗いを拝借した所、和紙にとても美しく筆書きされた
「当店ではパートを募集しています。
①30歳代から40歳代の女性の方
②時給〇〇円
③■時から▲時まで週2~5回勤務できる方」
という求人の張り紙が貼ってありました。
こういった求人のポスターがお店の壁に貼っていることはよく見かける光景では無いでしょうか。
綺麗な字だな~っと見ていたのですが、
「ちょっと待てよ、最低賃金割れしている?30歳代から40歳代、女性の方・・・?」と全ての文字に疑問が生じました。
この求人張り紙の短い文章に4つの種類の法違反が存在していたのです。
ではどこの部分がどのように法違反していたのでしょうか。
(最低賃金法)
まず、1つ目は、あえて時給いくらだったかは置いておき、そのお蕎麦屋さんの所在地の都道府県の地域別最低賃金に満たなかったこと。
最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、仮にもしも最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはならなくなります。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
(男女雇用機会均等法)
2つ目に「女性の方」に限定していること。
男女雇用機会均等法では、性別を理由として募集において女性のみを排除したり、女性に異なる条件をつけることを禁止しています。「女性のみ募集」ということは女性を募集・採用から排除するわけではないので許されるのかというとそうではないのです。
募集で男女が異なる取り扱いをすることが合理的に認められるケースは、例えば、宗教的理由からその性別の人を配属困難な国・地域に派遣する様な職業や、防犯上の要請の理由、芸術及び芸能の表現的理由である場合等によります。
おそらく飲食店のパートは女性が多いなというイメージからこのお蕎麦屋さんは求人を女性に限定したものではないかと思います。しかし、もしもこの雅な雰囲気の蕎麦屋さんに憧れて働きたいと思った男性がいたとしても求人募集にすら応募できないというふうに捉えられかねません。「ここで働きたい」というチャンスは男女共に均等にあってほしいと思います。
(労働施策総合推進法・高年齢者雇用安定法)
3つ目に「30歳代から40歳代」の部分です。
労働施策総合推進法9条(平成30年改正前の雇用対策法10条)では、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないと定められています。また、高年齢者雇用安定法20条でも、一定の年齢を下回ることを条件としている募集について、その理由を明示しなければならないとしています。
この場合、30歳代から40歳代に限定しているのであれば、その合理的な理由を説明しなければなりません。
年齢を限定して募集できる例外も、演劇子役等表現上の理由や警備業法上の事由、高年齢者雇用安定法等の国の施策を活用する際の要請に基づいて60歳以上の人に限定した募集する場合などになってきます。
上記のことから、募集にあたっては、原則、性別や年齢に制限を設けることはできないのです。
ただ、採用は、使用者の自由です。
募集について性別や年齢に関する制限はありますが、あくまで募集について公平な機会をい与えなければならないのであって、採用に関しては使用者の選択の自由があります。誰をどの様な基準で選択し、その様な条件で労働契約を締結するかは使用者判断となります。(もちろん法律を遵守した上でとなります)
このお蕎麦屋さんでの美しい筆書きの短い文章の求人募集の張り紙から、
こんなにも法律違反的な判断ができることは残念に思いました。
求人についても弊社では相談から承っております。
法違反の無い求人を行い、気持ちよく応募頂けるようご協力しておりますので、
是非ご相談下さい。