内定取り消しは認められるのか否か
先日、「内定を出した後、入社前に今一度お会いした人が面接時の印象と違ったので、入社をお断りできないか」という相談を頂きました。
内定とは、法律的に「始期付解約権留保付労働契約」を締結している状態を言います。
これは「勤務開始時期を明示して、企業にそれを取り消す権利を保留させる労働契約」という意味で、
内定取り消しは、企業側からの労働契約の解消であり、「解雇」に該当します。
よって、正当な理由が無い内定取り消しは認められないのです。(※1)
「やむを得ない事情」で会社から内定の取り消しをしたい時は、
事情を十分に説明し、一定の金銭補償をするなどして、内定者と十分話し合いを行い、
その上で内定者の合意が得られるのであれば問題ないかと思います。
しかし、この「やむを得ない事情」ですが、
「客観的に合理的な理由及び社会通念上相当であるという事情に加え、特段の事情と解するのが相当である。(※2)」
という解釈がなされることが多いです。
これは、大地震や大火災によって会社の建物が全壊して働く場所が確保できない場合などに想定されています。
つまり「やむを得ない事由」は、「この人想像していた印象の人ではないな。」程度の理由で内定取り消しは難しく、もしも、内定取り消しによる訴訟が起こった場合は企業側は厳しい状況になりかねません。
では内定取り消しが認められる要件はどういったものがあるのでしょうか。
・内定を出した後、会社の業績が著しく悪化し、現在在籍中の社員の解雇を回避するための場合。
・新卒採用の大学生の大学卒業が成立しなかった場合。
・病気や怪我で働けなくなり、就職困難に陥った場合。
・重大な経歴詐称の場合。
が考えられます。
内定取り消しを安易に行うと、レピュテーションリスクなど、会社のイメージダウンに繋がりかねません。
そして、内定は、入社前であっても労働契約法の適用となる労働契約を締結している状態になります。
容易に解雇できない様に、容易な内定取り消しもできないのです。
(※1労働契約法16条)
(※2労働契約法17条)
松尾