一般社団法人の診療所も決算報告が義務化へ。施行に向けた準備と注意点
現在、一般社団法人(および一般財団法人)で診療所を経営されている開設者の皆様にとって、極めて重要な法改正が進んでいます。
これまで医療法人にのみ課されていた「事業報告書等の提出義務」が、いよいよ一般社団法人等が運営する診療所にも拡大されることとなりました。
今回は、現時点で判明している「確定した事実」と、今後の議論で具体化する「見込み事項」を整理して解説します。
1.なぜ今、規制が強化されるのか?
今回の改正の背景には、医療機関の「非営利性」の徹底があります。 本来、医療は非営利で行われるべきものですが、一部の一般社団法人において、実質的に営利に近い運営が行われている懸念が指摘されてきました。
そこで、厚生労働省の検討会(社会保障審議会等)において、医療法人と同等の透明性を確保するため、医療法に基づく情報公開ルールを一般社団法人等にも適用する方針が決定されました。
2.報告義務の内容とスケジュール
現時点で閣議決定および方針として示されている確定事項は以下の通りです。
・適用時期: 2026年度(令和8年度)の事業分から適用(2027年度の決算報告より開始)
・対象: 病院または診療所を開設する一般社団法人・一般財団法人
・義務の内容: 毎会計年度終了後3ヶ月以内に、事業報告書、貸借対照表、損益計算書等を都道府県知事へ提出すること
・閲覧制度: 提出された書類は、都道府県において一般の閲覧に供される(情報が公開される)
3.今後、具体化されることが予想される事項
現在、具体的な改正条文(医療法施行令や施行規則の改正案)の細部は調整中ですが、実務上以下の点に注視が必要です。
・経営情報の詳細報告:令和5年から医療法人に義務化された「経営情報の報告(職種別給与など詳細な収支)」についても、追随して対象に含まれるかどうかが議論の焦点となります。
・外部監査の適用範囲:医療法人と同様、一定の資産規模や負債額を超える法人に対しては、公認会計士や監査法人による外部監査が義務付けられる可能性があります。
・役員構成への制限:現在は、保健所毎の指導にとどまり、医療法人のような厳しい役員構成制限がないケースもありますが、今回の報告義務化に合わせ、ガバナンス(運営体制)に関する指導が強化されることが見込まれます。
今回の法改正により、一般社団法人立の診療所は「作って終わり」ではなく、医療法人と同等の高度なコンプライアンス管理が求められるようになります。
特に、今まで監事による監査や決算書類の公告を形式的に行っていた法人の場合、体制の再構築が必要です。
- 現在の定款が医療法人の基準に照らして適切か
- 会計区分が医療機関分とそれ以外で明確に分かれているか
- 報告義務に耐えうる会計帳簿が整備されているか
当法人では、これら医療法務に関する体制整備のご相談を承っております。施行直前に慌てることがないよう、早めの現状確認をおすすめいたします。
法改正の具体的な条文案やパブリックコメントの内容については、詳細が公表され次第、改めて本ブログで解説してまいります。
医療経営のパートナーとして、皆様の安定した運営をサポートいたします。
免責事項: 本記事の内容は2026年4月時点の検討状況・公表資料に基づくものです。法令の施行にあたっては、最終的な改正条文や自治体の運用通知を必ずご確認ください。


