有期雇用労働者が期間途中で退職するケースと期間満了による退職のケースについて
入社後、まずは有期雇用契約を締結しておくという会社様が増えたように感じます。
試用期間とはまた別に、お互いに仕事に慣れるまでは雇用の期間を定めておき、一人前にお仕事を任せられるようになってから正社員へ、、、という流れでしょうか。
しかし、よくよく考えて、有期雇用期間中に、労働者側からいつでも退職を申し出たり、又は、期間満了になれば当然に退職させることができるものなのでしょうか。
今日はそのへんを解説したいと思います。
実は、有期雇用契約は、労働者保護の観点から 労働契約法17条第1項にも「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間が満了するまで労働者を解雇することができない。」と定めれており、無期雇用労働者よりもより厳しく、期間途中の解雇についても制限をかけています。
よって、有期期間中、使用者から退職を勧奨した場合、「解雇」と同じことになり、労働契約法16条の適用により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と定めに従うことになります。
先日も申しましたが、この「やむを得ない事由」とは、「仕事が向いてなかった」「職場環境が合わない」「仕事への情熱・積極性が足りていない」等の理由では認められません。
逆に、労働者から有期期間中の退職は申し出る事ができるのかについてですが、 民法628条によって、期間の定めのある労働契約を締結している労働者は、契約期間の途中で退職はできないとなります。
なぜかというと、期間の定めのある労働契約とは、「契約で定めた期間中、労働者は使用者に対し、労務を提供し、使用者はその労務提供に対して賃金を支払うことを約束している」期間なので、契約期間の途中で当事者が一方的に契約を破棄することができないのです。
ただし、民法628条で、「やむを得ない事由」があれば、有期期間契約の期間中であっても直ちに契約を解除できるとあります。
しかし、この「やむを得ない事由」がない場合がもしも労働者の過失によって生じた場合は使用者は労働者に損害賠償を請求することもできるのです。
よって、原則は、有期雇用契約を締結したら、その期間は労務を提供することをお約束している期間となり、簡単に労働者からも退職を申し出することは難しい期間となります。
しかし、例外として、労働者からの有期雇用契約期間中の退職申し出に対し、使用者が任意に同意した場合、双方の合意による労働契約の解約となるため、「退職」(労働者からの一方的な解約の申し立て)にならず、「やむを得ない事由」も必要なくなります。
一方、有期雇用契約期間が終了すれば、契約が終了するということになり、契約期間満了による雇い止めということができます。 雇い止めは解雇ではないため、雇い止めをするかしないかは自由になります。さらに解雇ではないため、解雇予告手当の規制も適用されません。
しかし、もしも有期雇用契約が繰り返し行われており、実質的に無期雇用と変わらない状況になったら話は変わります。 労働契約法19条1号の規定により、もしも、有期雇用契約が反復更新されており、労働者から契約更新の申し込みがあった場合、使用者がこれを拒絶することは、その更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、更新申し込み等を承諾したものとみなす旨を規定しています。
この「みなす」ですが、「みなす」は、法律的に非常に強い言葉でして、反証を認めず取り消せないものの意味合いになります。 従って、この場合には雇い止めができず、使用者は当該労働者との間で労働契約を更新したものとみなされます。
そのため、トラブル回避のため、労働契約締結時に書面で、 1.契約更新をする 2.契約更新をしない 3.契約更新をすることがある のいずれかを明記しておかなければなりません。
さらにいうと、契約更新回数をあらかじめ定めたり、契約不更新条項を定めておくことがお勧めです。 また、有期労働契約の雇止めについてですが、
•1年を超えて継続勤務
•3回以上更新している
•1年を超える契約期間
のいずれかの有期雇用契約を更新しない場合、その従業員に対して30日前までに雇止めの予告する必要があります。
有期雇用契約の雇用契約は、こういった側面からも内容をあらかじめ整えておく必要があります。
弊社でも契約書作成や案をケースに応じて承っておりますので、是非ご相談下さい。
松尾