2024年法改正情報について
■一部助成金の拡充
2023年度補正予算で、例えばキャリアアップ助成金の正社員化コースが、
2023年11月29日以降に転換した方は従来の57万円から80万円に助成金額が増加しました。
また、申請のスケジュールも2期にわけて行うことに変わります。
なお、キャリアアップ助成金については、不正受給が増加していることから審査がかなり厳しくなっており、全国的に不支給が相次いでいるようです。
特に、就業規則が実態と相違ないか(賞与の時期や手当の明記、残業計算が規定通りか)、また契約社員から正社員になった際に待遇が良くなっているか(賞与や昇給、退職金等)実態が伴っているか、に注意が必要です。
【2024年の主な法改正施行等】
■2024年4月1日 労働基準法施行規則の改正(無期転換ルールの明確化)
有期契約労働者に対して「無期転換申込権」が発生する更新の際に、無期転換の申し込みが可能である旨(無期転換申込機会)を明示することが義務となります。また、無期転換後の労働条件の明示も必要です。
「無期転換申込権」は、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールですので、契約更新の際にはご注意ください。
また、今回の改定によって、全ての労働契約の成立時や有期契約の更新の際に、就業場所や業務の変更の範囲も明示が必要となります。
※従来は採用直後の勤務地と担当業務を明示すればよかったのですが、4月以降は採用直後の勤務地や業務内容、それらの変更可能性も明記が必要です。
https://www.mhlw.go.jp/content/001114167.pdf
■2024年4月1日 労働基準法施行規則の改正(裁量労働制見直し)
専門業務型裁量労働制の導入・継続時に、労働者の同意を取得すること、そして同意を得られなかった労働者に対して、不利な扱いや解雇をしないと明記する義務が生じます。
また、専門業務型裁量労働制の適用対象業務が拡大され、従来の19業務に「銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務」が新たに加わります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001057847.pdf
■2024年4月1日 障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則改正(障害者雇用率の引き上げ)
現在、民間企業の障害者の雇用率は2.3%、これが4月から2.5%に変更、2026年7月には2.7%と順次引き上げられる予定です。
これにより、2024年4月からは従業員数が40人以上の企業、2026年7月からは従業員数が37.5人以上の企業でも雇用の義務が発生することになります。
なお、特定の業種では障害者の雇用責任を緩和する「除外率制度」 が設けられていますが、この制度も2025年4月に改訂を控えており、除外率が一律で10ポイント低下する見込みです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001039344.pdf
■2024年4月1日 労働時間法制の見直し(時間外労働の上限規制適用)
中小企業においては2020年4月からすでに施行されていますが、
一部(建設業や自動車運転業など)は5年間の猶予期間が設けられており、4月1日以降は残業の上限が月45時間、年間で360時間と厳格に制限されます。
■2024年10月1日 厚生年金保険法の改正(社会保険加入の適用拡大)
2020年の年金制度改正法により、社会保険の加入対象が拡大されることとなりました。
2022年10月から中規模企業(従業員数101~500人)に、
2024年10月からは従業員数が51~100人の中小企業も社会保険の適用範囲拡大の対象になります。
なお、こちらの人数は、社会保険に加入義務がある方についての人数であり、単に雇用している従業員数ではないのでご注意ください。
■2024年12月8日 健康保険法の改正(マイナンバーカードと健康保険証の一体化)
2023年6月2日の改正マイナンバー法可決により、2024年秋からは紙やカード形式の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として使用することが必須となる見込みです。
ただし、上記期日以前に発行された健康保険証は、有効期限(最も遅い場合で2025年秋頃まで)までは、今まで通り使うことができるとされています。
また、マイナンバーカードを持っていない場合や未登録の方、カードを紛失した方が医療を受けられるように、健康保険組合等が「資格確認書」を無償提供する計画もあり、この資格確認書の有効期限は当初1年とされていましたが、上限が5年に延ばされる方針ですが未定です。
いずれにせよ、従業員に向けて周知、マイナンバーカードの取得を促進していただいたほうが、会社としては手続きが発生する可能性は低くなると思われます。
新井健郎