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2024.11.21

入社一時金・入社祝い金の取り扱いについて

入社時に「入社一時金・入社祝い金」を支給するケースがあります。
しかし、この金銭を給与として日給月給の賃金と同じ扱いにしてよいのか、
はたまた社会保険料や所得税の扱いはどうなるのか、と、よく質問を頂きます。

 

入社一時金・入社祝い金・入社準備金等、名称は様々ですが、
「我が社に入社してくれたら給与とは別に入社祝い金を支給します」
という趣旨の金銭が支払われるものについて、
「税務上」「労働保険」「社会保険」の観点はどうなるか、
それぞれの法的根拠を見ていきます。

 
所得税法上、給与所得とは
「俸給、給与、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」

 
労働基準法上、賃金とは
「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」

 
健康保険法上、報酬とは
「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの。」
という様に、法律毎にそれぞれ定義がありますので、支給する金銭の性格・内容から判断し、所得税や労働保険料(雇用保険料)、社会保険料を控除すべきか否かを検討することになります。
例えば、「通勤手当」の税法上と労働保険・健康保険法上の取り扱いの違いですが、
所得税法上は「通勤手当は実質弁償的な性質で旅費に準ずる」
として一定の金額まで非課税とされていますが、
労働保険(雇用保険)、健康保険法上は
「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものが対象となり、通勤手当も労働の対償として得る報酬の一つである」として給与に通勤手当を含めて保険料を算定します。通勤手当のように税法上と労働保険・社会保険上の取り扱いが違う手当がございます。

 
今回議題にあげている入社一時金・入社祝い金の税法上の取扱いですが、
・給与所得・・・勤務先から受ける給料、賞与などの所得
・一時所得・・・営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質が試算の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得
を踏まえて考えた場合、
実際に働いた対価ではないですが「将来の雇用契約を前提として」支払われるものですので「労務や役務の対価としての性質」を有するものとして一時所得には該当しないと考えられます。 しかし、給与所得か雑所得かを考えた場合、
「我が社に来てくれると決めてくれたなら入社前に準備金として支払います。その代わり絶対に入社してくださいね♡」ということであれば雇われる前に受け取ることになりますので「近い将来すぐに勤務先になるけどまだ勤務してない会社からもらった所得」になり将来の勤務先から受けるものになり、雑所得に該当します。
一方で、「雇用契約にサインしてくれたら入社1ヶ月後に支払うから必ず入社してね♡だから雇用契約書にサインしてください。」と言って雇用契約を締結した後に入社祝い金を支給した場合は、すでに雇用契約締結後のため「勤務先」から受ける所得に該当し「給与所得」になると考えられます。
また雇用の謝礼として入社後に支給した場合は賞与となる可能性が高くなります。
次に、「労働保険」(雇用保険)の取り扱いですが、
入社祝い金は年功慰労金と同様、事業主が任意的恩恵的に支払うものであり、労働の対償とはいえないと考えられており、
保険料の算定の対象にならないと判断されます。

 
最後に、「社会保険」の取り扱いです。
判例では
「入社の際に支払われる一時金は賞与として社会保険の対象となる」として
「将来の労働を約するもの」も「労働者が労働の対償として受けるもの」と判断されるケースが増えております。
就業規則や給与規程に条文のない状況で支払われる入社一時金・入社祝い金は任意・恩恵的に支給されるもので社会保険の対象となる賞与に該当しないという見解もありますが、
結婚祝金・死亡弔慰金・病気見舞金・災害見舞金等「恩恵的に支給されるもの」として列挙されているものと入社一時金・入社祝い金は似て非なるものであり、
就業規則や給与規程に基づかない支出であっても
「将来の労働を前提とした支給であり労働の対償になる。」
「賞与届の提出及び社会保険料の徴収必要なもの。」
として社会保険の対象となる賞与に該当すると考えられます。
しかし、
入社に際しての「転居等引越し費用」等、人により準備金を支給したりしなかったりされる場合もある(転居等の実費及び支度金を支給されている)のであれば、
これは労務の対象としての報酬として算定の対象にならず、
賞与としての社会保険の標準報酬額に含めません。

 

この様に、入社一時金・入社祝い金は、個々の支払いの性格を判断して、税法上、社会保険上(健康保険法上)、労働保険の取り扱いが変わります。
非常に判断がややこしいですので、
悩まれた場合は弊社へ御相談ください。

 

松尾倫加

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