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2024.07.07

年次有給休暇を当日朝に請求していた場合応じなければならないのか?

もしかしたら、年次有給休暇は労働者の当然与えられた権利であり、労働者の請求する日に必ず取得できる、もしくは取得させなければならないと考えていらっしゃる方がいるかもしれません。
私も社労士になる前、長い間営業のサラリーマンをしていたのですが、
その会社では「年次有給休暇の申し出を休んだ日以降にも請求できる」と上司に言われており、
実際「昨日は有給にして良いですか?」という会話が成り立っていたのですが、
そのときは就業規則を確認するようなことも行わずじまいだったので、
上司の指示が正しかったのか正しくなかったのか今はもはや昔のことです。
果たして法律上の規定ではどうなっているのでしょうか。

 

労働日のカウントは、その会社の始業時刻から終業時刻を1日としてではなく、
原則として暦日午前0時から午後24時を1日の労働日としてカウントします。(昭63.3.14基発150号)
つまり、始業時刻から年次有給休暇が始まるのではなく、暦日計算によって、その日の午前0時から始まり、そこから24時間の休息を与えることによってはじめて「一労働日」の年次有給休暇を与えることになります。
よって、有給休暇当日朝は、すでに該当日の労働日が始まっている途中ということになります。
よって、年次有給休暇取得の申し出が当日の朝であれば、たとえ始業時刻前であっても、すでに午前0時を過ぎているため、
「労働日」が始まってからの事後請求となり、原則として、年次有給休暇の取得は認められないということになります。

 

また、こちらも誤解されていることが多いのですが、
実は、年次有給休暇は、
労働者の申し出た希望日に当然に与えなければならないことはございません。
まず、労働者は年次有給休暇の時季指定権という権利をもっています。
一方、使用者は年次有給休暇の時季変更権という権利をもっています。
(労働基準法第39条第5項)
 

つまり、
労働者は自分の有給休暇を取得したい希望日を指定し、その希望日は「事業の健全な運営を妨げるかどうか」使用者が判断し、時季変更権を行使しなかった場合に、労働者は御自分の希望する日に有給休暇を取得することができます。
つまり使用者は有給休暇を拒否できないものの、その取得日を変更することができるのです。
よって、有給休暇取得日の当日朝に「今日有給休暇にします、だから、会社には出勤しません。」
ということは、使用者が「事業の健全な運営ができるかどうか」の判断ができない為、労働者が使用者の時季変更権の権利を奪っていることになりかねず、原則として認められないことになります。
よって、当日朝に「本日有給休暇にするので出勤しません」という連絡が来た労働者は欠勤扱いになります。

 

最後に、
過去にあった判例をご紹介します。

 

「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)に対する使用者の時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇期間が開始し又は経過した後にされた場合であっても、労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかったようなときには、それが事前にされなかったことのゆえに直ちに時季変更権の行使が不適法となるものではなく、客観的に右時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が遅滞なくされたものである場合には、適法な時季変更権の行使があったものとしてその効力を認めるのが相当である。(以下略)」(此花電報電話局事件 最高裁一小 昭57.3.18判決)

 

松尾倫加

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