日給月給制・月給日給制・時給制・日給制・月給制・年俸制の違いをご存知ですか?
恥ずかしながら、私は社会保険労務士の資格取得前まで、「日給月給制」とか「月給日給制」の言葉を知りもしませんでした。
それまで大手製薬会社で15年間仕事をしていた頃は年俸制でしたが、
評価面談時には「今、年収幾らで、月給いくらなのか。」
などという会話をしていたものです。
その時の私は、賃金・給与にそもそも興味を深く持っておりませんでした。
しかし、賃金形態は6つあります。
この6つは、ただの表現の違いではございませんので、詳細をご紹介いたします。
【日給月給制】
日給月給制は、1日ごとの給与が決まっており、休みなどの分を差し引いて月に1度まとめて支払う給与体系です。遅刻や欠勤により、働かなかった時間分は控除されます。
遅刻や欠勤による給料の控除が、基本給に限らない点に注意が必要です。一般的に、役職や職務に関する手当など、月ごとに支払われるさまざまな手当も日割りで控除されます。残業や深夜勤務がある場合は、残業手当の支払いが別途支給されます。
日給月給制は、従業員に経済的な安定感を提供できます。遅刻や欠勤がない限り、毎月一定の給料を受け取ることができるからです。安定した収入が得られるため、働くモチベーションアップにもつながるかと思います。
従業員の満足感を高めることで、離職率を低下させ、長期的な人材育成も実現できます。
また、事業主からすると、給与の月額が事前に決まっているため、支払い管理の手間が少ない点も魅力の部分です。
日給月給制は、決められた月額から欠勤や遅刻した分を差し引いていく給与形態のため、欠勤の多い従業員へ支払う給与が減少します。欠勤や休業状態で出勤日数が少なくなる月も支払う給与が減少します。事業主にとって、毎月の人件費を計画しやすいだけでなく、不必要な支出を削減できる点が日給月給制の利点です。
【月給日給制】
月給日給制は、給与の月額を事前に定めている給与体系です。
日給月給制と同様、遅刻や欠勤の分が控除されます。
しかし就業規則などで取り決めがない限り、控除されるのは固定給のみである点に留意が必要です。支給される職務手当などは、一般的に控除されません。
給与の計算方法は会社によって違うため、各種手当が控除対象かを事前に確認しておく必要がります。また、事業主はしっかりとその内容について就業規則や賃金規定に定めておく必要があります。
【時給制】
時給制は、実際に働いた時間に基づいて、決められた時給が支払われる給与体系です。例えば時給1,000円の場合、月80時間の労働時間で80,000円を支給します。
時給制は働いた時間の分のみの支給です。時給制は、短時間勤務のアルバイトやパートで一般的に採用されていることが多いです。
【日給制】
日給制は、実際に働いた日の分のみ、あらかじめ設定された金額を支給する給与体系です。例えば、1日あたり8,000円の日給で10日間出勤した場合、給与は80,000円が支払われます。もしも1日に3時間働いても7時間働いても、一律で1日8,000円の支給となります。
日給制は働いた日数によって給与が決まるのに対し、日給月給制は欠勤や遅刻などの日数で給与が変更する(控除される)点が違いです。
【月給制】
月給制は決められている固定給が必ず支払われる給与体系です。
日本では、管理職や責任のある役職の従業員に月給制が採用されることが多いです。
欠勤や休業状態で出勤日数が少なくなる月も支払われる給与が減少することは無く、決められた月当たりの給与が支払われます。また月給制であっても、時間外労働や休日労働などの残業代の支払いは必要です。
従業員採用時に本当は日給月給制であるにも関わらず、契約時に「月給制です。」と間違って従業員に伝えてしまうと、後々に「欠勤による給料の控除がなぜされているのだろう」と誤解やトラブルを招く可能性がありますので、内容を正しく伝えておくことが大切かと思います。
よって、雇用契約書にはしっかりと「日給月給制」か「月給日給制」か「月給制」なのか正しく記載しておくことを強くお勧めいたします。
【年俸制】
年俸制も月給制同様毎月支払われる給与であることから、年俸制と月給制を混同している人は少なくないかと思います。私もまさにその一人でした。
しかし、年俸制と月給制には明確な違いがあります。
年俸制と月給制の大きな違いは、給与額の変動の有無です。
年俸制は、あらかじめ1年間の給与額を決定し、12ヶ月に分割して支払われます。原則として決定した年俸額を支払わなければならず、1年間で給与額が変動することはありません。
一方で月給制は、毎月給与額を決められます。例えば、業績不振によるボーナス増減等が変動の要素となることが多く、業績不振が原因で1年の収入が途中で変動することがあります。このように、年俸制と月給制には1年間の給与額が変動するか否かという違いがあります。
以上のように、同じ給与でも、
我々社労士は賃金形態によって給与計算時に全く違う方法で計算していきます。
従業員を採用される際は、賃金形態を正しく説明することが重要かと思います。
給与に関する誤解があると、後に大きな問題につながる可能性があります。
日給月給制は月給制の一種のため「月給制」と伝えても間違いではありません。しかし、月給制と伝えると、欠勤しても給料が変わらないと誤解されることがあるため、注意が必要かと思います。
また、雇用契約書の作成時から、しっかりと賃金形態を記載しておくことが重要です。
弊社では多くの企業様の雇用契約書から作成を依頼頂き、トラブル回避のためのアドバイスもさせていただいております。
ご相談等お気軽にご連絡下さい。
松尾倫加