法定四帳簿について
私が社会保険労務士試験の受験生の頃は「法定三帳簿」と言っていましたが、
2019年4月から「年次有給休暇管理簿」が追加され、4種類の帳簿を整備し、保存することが義務付けられました。
現在は労務管理をする上で、法的に備え付けが義務付けられている帳簿として
①労働者名簿(労働基準法108条)
②賃金台帳(労働基準法108条)
③出勤簿(労働基準法108条)
④年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条)
があり、
これらを「法定四帳簿」と言います。
いずれも事項が記載されていればどんな様式でも構わないとされています。
保存期間は、2020年4月1日施行の改正労働基準法第109条により、5年に延長されました。現状は経過措置として従来の3年ですが、5年の保存期間を見据えて対応することが重要です。
法定四帳簿に起因する労働基準監督署の是正勧告では、
帳簿を作成していない、
記載漏れがある、
賃金台帳を事務委託した会社にあずけて自社で保存していない、
などのケースがあります。
年次有給休暇管理簿を除き、規定に違反した場合は労働基準法により30万円以下の罰金に処される場合があります。
また労働基準監督署の調査の際に帳簿を提出しない、
または虚偽の記載をした帳簿を提出した場合も処罰の対象となるため適正な整備が重要です。
それぞれの具体的な運用について紹介いたします。
【労働者名簿の運用】
労働者名簿は事業場ごとに、
日雇労働者を除くすべての労働者について作成する必要があります。
必須記載事項は、労働者の氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れの年月日、退職の年月日と原因です。記載事項に変更があった場合は遅滞なく訂正しなければなりません。
保存期間の起算日は「労働者の死亡日、退職または解雇の日」です。
【賃金台帳の運用】
賃金台帳は事業場ごとに作成し、賃金の支払いの都度、労働者ごとに遅滞なく記入する必要があります。
必須記載事項は労働基準法108条則54条1項及び4項に定められており、
労働者の氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給および手当額、賃金控除額です。
保存期間の起算日は、「最後の記入日」となっています。
賃金台帳は一般的な給与明細や源泉徴収簿での代用はできません。
源泉徴収簿を兼ねた賃金台帳を使用する場合は、記載事項に記入漏れがないか確認してください。
また日雇労働者に関しては、賃金台帳は必要ですが、賃金計算期間の記載は不要です。
【出勤簿の運用】
出勤簿は、
労働者の労働時間を把握するための帳簿です。
記載事項は、
労働者の氏名、出勤日、出勤日ごとの始業および終業時刻、出勤日別の労働時間数と休憩時間数、時間外・休日・深夜の労働時刻と時間数です。
厚生労働省作成の
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、
労働時間の把握はタイムカードやICカード、パソコンの使用時間記録などの客観的な記録により把握することが求められています。
自己申告制については、適正な時間把握を行うための十分な説明と、実態と申告が乖離する場合の実態調査、及び労働者自身による適正な時間管理と事業主への報告が義務付けられています。
2019年4月以降、客観的な記録による労働時間の把握は、法的義務となっています。
高度プロフェッショナル制度対象労働者を除くすべての労働者が対象となっているため留意しておく必要があります。
【年次有給休暇管理簿の運用】
すべての企業は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者含む)に対し、年5日については、使用者が時期を指定して取得させることが義務付けられています。
使用者は、年次有給休暇を与えた時期、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした帳簿を作成し、保存しなければなりません。
労働者名簿や賃金台帳と併せて調製することも可能です。
これらの法定4帳簿の運用・管理について、弊社では具体的にアドバイスさせていただいております。
もちろん突然の労働基準監督署の調査にも誠実に対応するため、日頃から調整しておくことが大変重要です。
少しでも不安のある方がおられましたら、ぜひ弊社へご相談ください。
松尾倫加