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2025年の法改正のご案内

1️⃣【2025年1月】厚生年金保険法施行規則が改正されます。
3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例の申出等に係る添付書類が省略されます。
一般的に、収入の減少により標準報酬月額が低下すれば、将来受け取れる厚生年金支給額も低下してしまいます。
しかし、厚生年金には、3歳に満たない子を養育するために標準報酬月額が下がっても、将来の年金額には影響しないという制度が設けられています。
これを
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
といい、
通常は被保険者の申出によって、事業主を経由して手続を行います。
従来の決まりでは、
「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書の原本」および「住民票の写し」の2種類の書類を添付しなければならないとされていました。
2025年の改正により、
みなし措置を受けるために必要な書類が見直され、
事業主による確認を受ければ、
「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書の原本」
の添付を省略することが可能になります。

2️⃣【2025年1月】労働者死傷病報告等の電子申請が原則義務化されます。
以下の報告の電子申請が原則義務化されます。
・労働者死傷病報告
・じん肺健康管理実施状況報告書
・総括案税衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
・定期健康診断結果報告書
・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書
・心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書
・有機溶剤等健康診断結果報告書

また、労働者死傷病報告書に関しては報告内容も変更になります。
電子申請が困難な場合には紙媒体での報告も経過措置として設けられています。
また、労働基準監督署に設置のタブレットにて電子申請できる体制も整備されるとのことです。

3️⃣【2025年4月】高年齢雇用継続給付が引き下げられます。
60歳以降に賃金が60歳時点の75%未満となった場合に65歳まで給付されていた高年齢雇用継続給付ですが、
2025年4月以降に60歳となる労働者への給付率の上限が現行の15%から10%に引き下げられます。
高齢者雇用継続給付については段階的に廃止となる予定です。

4️⃣【2025年4月】希望者全員の65歳までの雇用確保が義務付けされます。
従来は一定の要件を満たすことで対象者を限定できる経過措置が設けられていましたが(★※注意※★)、
2025年4月1日以降は措置期間が終了し、
希望者全員に65歳までの雇用機会を確保しなければならないこととなります。
具体的な雇用確保の方法としては
◉「定年延長」
◉「雇用延長」
◉「再雇用」
の3つの選択肢が用意されています。
これらの方法を適切に導入すれば、
企業は65歳までの高年齢者の雇用を確保し、労働力を維持することが可能です。
企業は自社の状況に合った方法を選択し、法改正に対応していくことが求められます。
それぞれの方法について以下で詳しく解説します。
◉「定年延長」
定年延長とは、現在の定年を引き上げて65歳まで雇用する方法です。
たとえば、60歳定年制の企業が定年を65歳に引き上げることで、全従業員が65歳まで引き続き働けるようになります。
この方法は一律に定年年齢を上げるため、
全社員に平等な雇用機会を提供するメリットがあります。
一方、企業にとっては賃金や福利厚生の見直しが必要となるため、コスト面の負担も考慮する必要があります。
◉「雇用延長」
雇用延長制度は、60歳で定年を迎えた社員に対して定年後も引き続き現在の雇用契約を延長する制度です。
具体的には定年をそのまま維持しつつ、希望者に対しては現在の労働条件で働き続けることができるようにする方法です。
企業は給与や社会保険料の見直しなどを行いながら、現役社員としての雇用を延長するため、スムーズに雇用を継続できます。
労働者のスキルや経験をそのまま活かすことができる点も大きな利点です。
一方で労働条件や給与面の見直しを行う際、労働者のモチベーション低下や合意形成が難しくなるなどの課題が生じる可能性もあります。
トラブルを避けるには、企業と労働者それぞれの着地点を探りながら条件を調整し、合意を得る必要があります。
◉「再雇用」
再雇用制度は、定年後に一度退職扱いとなった従業員を再度雇用する方法です。
企業は新たな雇用契約を締結し、労働条件や勤務形態を柔軟に調整することができます。
この制度は、定年前と比べて労働条件が変わることが多いため、労使間での合意形成が必要になります。
企業としては人件費の調整が可能であり、従業員にとっても働きやすい条件を選べるメリットがあります。

(★※注意※★)
【2013年改正のポイントについて】(2025年に経過措置期間が終了します)
◉定年制の廃止
◉65歳までの定年の引上げ
◉希望者全員の65歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)の導入
上記にも記載した通り、
従来は一定の要件を満たすことで対象者を限定できる経過措置が設けられていましたが、
2025年4月1日以降は措置期間が終了し、
希望者全員に65歳までの雇用機会を確保しなければならないこととなります。
なお、2021年にはさらなる改正が行われており、現行法では以下のいずれかを実現する努力義務が設けられておりました。
【2021年改正のポイントについて】
◉定年制の廃止
◉70歳までの定年の引上げ
◉70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
◉70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
◉70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

5️⃣【2025年4月】障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則が変更されます。
現在も障害者雇用促進法にて、一定の従業員数を上回る企業においては、法定雇用率(原則2.5%)に基づいた人数の障がい者を雇用することが義務付けられています。
従業員を40.0人以上雇用している事業者は、障がい者を1人以上雇用しなければならないという意味です。
しかし、特定の業種における企業は、
業務の性質になじまないなどの理由から雇用義務の軽減措置が設けられています。
これを「除外率制度」といい、例えば採石業や水運業では10%、建設業や鉄鋼業では20%、小学校や道路旅客運送業では55%のように、業種に応じて異なる割合が適用されています。
除外率が高いほど、義務付けられた障がい者の雇用人数が少なくなるという仕組みです。
2025年の改正により、除外率について以下の変更が行われます。
【2025年4月1日施行の改正内容】
♪設定業種の除外率はそれぞれ10%ずつ引下げ
♫既に除外率10%以下の業種については制度の対象外へ
♬「警備業・介護老人保健施設・介護医療院」の3業種が新たに除外設定業種へ

なお、2026年6月30日までの間については経過措置が設けられています。

6️⃣【2025年4月】教育訓練給付関係の改正
☆自己都合退職者が自ら教育訓練等を受けた場合の給付制限解除
☆就業促進手当の見直し(就業手当の廃止および就業促進定着手当の給付上限引下げ)
☆教育訓練支援給付金の給付率引下げおよび暫定措置の2026年度末までの継続
☆雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の暫定措置の2026年度末までの継続

全体的な雇用保険制度の見直しを図り、現状に合った適用範囲の拡大や教育訓練の拡充を行うのが狙いとされています。
さらに、2025年10月1日にも改正があります。(後述します)

7️⃣【2025年4月】「育児介護休業法」「子ども・子育て支援法」「次世代育成支援対策推進法」が改正されます。(♥年内1回目の改正)
【育児・介護休業法改正により2025年4月1日で施行される改正内容】
■子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
1.3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する「働き方の柔軟化措置」の義務化
2.3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるような措置を講ずる努力義務化
3.所定外労働の制限対象の拡大(3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学前の子を養育する労働者へ)
4.子の看護休暇の拡大
■名称が「子の看護休暇」から、「子の看護等休暇」に変更(対象が小学校入学前の子から小学3年生終了時までに拡大され、取得可能な理由について学級閉鎖や入学式・卒園式も休暇の対象となる)
■育児休業取得状況の公表義務対象の拡大(従業員数1,000人超企業から従業員数300人超の企業へ)
■介護に直面した従業員に対する個別の制度周知・意向確認、雇用環境整備の実施の義務化

「働き方の柔軟化措置」とは、「始業時間等の変更」「テレワーク」「短時間勤務」「新たな休暇の付与」「保育施設の設置運営等」のうち、事業主が二つ以上を選択して実行することを指します。
これにより、仕事と育児の両立が実現しやすい環境整備を推進するというのが、改正のおもな狙いだと思います。

【子ども・子育て支援法改正により2025年4月1日で施行される改正内容】
■妊娠期の負担軽減を目的とした妊婦のための支援給付の創設
■妊婦等包括支援事業の創設
■産後ケア事業の提供体制の整備(地域子ども・子育て支援事業に位置付け)
■経営情報の継続的な見える化の実現
■子ども・子育て拠出金にかかる見直し
■こども誰でも通園制度の法定事業化
■施設型給付費等支援費用の事業主拠出金の充当上限割合の引上げ
■両親ともに育児休業を取得した場合の「出生後休業支援給付」および「育児時短就業給付」の創設
■子ども・子育て支援特別会計の創設

出生後休業支援給付とは、
出生直後の一定期間以内に、被保険者と配偶者が14日以上の育児休業を取得する場合において、最大28日間にわたって休業開始前賃金の13%相当額を給付するという制度です。
その結果、従来の育児休業給付と併せて「給付率80%(手取りで10割相当)」にまで支給額の引上げが行われます。

また、育児時短就業給付とは、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、「その期間に支払われた賃金の10%」にあたる給付金が支給されるという制度です。
そして、これらを支える仕組みとして、新たに「子ども・子育て支援特別会計」が創設されます。

【次世代育成支援対策推進法が2035年3月31日まで延長されます】
「次世代育成支援対策推進法」とは、
子どもの健全な育成の支援を目的に、2005年に施行された時限法です。
当初は10年間の適用期間が定められていましたが、必要性に応じて延長が重ねられ、2024年には改めて「2035年3月31日までの延長」が決定されました。
これにより、一定の規模以上の企業には、
一般事業主行動計画策定時に「育児休業取得等に関する状況把握」、「育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標設定」が義務付けられることとなります。
企業におけるPDCAサイクルの強化を図ることで、仕事と育児の両立に関する取組をさらに推進していくのが狙いとされています。

8️⃣【2025年10月】雇用保険制度の見直し
「教育訓練休暇給付金」が創設されます。これは、教育訓練を受けるために一時的に仕事から離れる場合に、その期間中の生活費を支援する制度です。
具体的には、5年以上の被保険者期間がある労働者が、自ら教育訓練に専念するために仕事から離れる場合において、
基本手当に相当する金額が支給されるという仕組みです。

9️⃣【2025年10月】「育児介護休業法」「子ども・子育て支援法」「次世代育成支援対策推進法」の改正(♥年内2回目の改正)
【育児・介護休業法改正による2025年10月1日施行の改正内容】
■仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が義務化されます。
2025年10月1日からは、
妊娠・出産の申出時あるいは子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立について個別に意向聴取・配慮することが事業主に義務付けられます。
個別の配慮とは、
例えば
「子の障がい等で労働者が希望する場合は各種制度の利用期間を延長すること」
「ひとり親家庭等の事情で労働者が希望する場合は各種制度の利用日数を増加すること」
等が挙げられます。

🔟(予告)【2028年10月】雇用保険が適用拡大されます。
来年ではなく、2028年10月ですが、
雇用保険の加入要件が変更されます。
現行の週所定労働時間20時間以上のところ、週10時間以上に引き下げられます。
これにより、各種手続きの算定基準も現行の1/2に改正されます。
例えば、失業給付を受給中に労働した日が1日2時間以上(改正前4時間以上)ある日は、その日は失業している日とは認定されません。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

松尾倫加
大島聡

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